9.4. メンデルの法則のさまざまな例
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メンデルの2つの法則
これらの法則は有性生殖を行うすべての生物に適用できる
しかし、メンデルの法則では説明できない遺伝様式を示す形質も多くある
赤白ピンクを示す花の色や、様々な色調を帯びるヒトの肌の色など2通り以上の形質が存在する遺伝様式の多くはメンデルの法則では説明できない
実際に、ほとんどの有性生殖を行う生物について、メンデルの法則により遺伝様式が完全に説明できる例は比較的まれ
訳注 : メンデル自身が提出した遺伝法則に一見合致しない遺伝現象も、その遺伝子が核DNAにコードされた遺伝子であれば、後述の染色体説によって、メンデルの法則に矛盾せずに説明できる
植物とヒトの不完全優性
表現型の中間の形質を示すような対立遺伝子の効果
赤花のキンギョソウを白花と交配させると、F1世代の雑種株はすべてピンク色の花をつける この場合F2世代では遺伝子型の出現比率と表現型の出現比率はともに赤:ピンク白 = 1:2:1となる
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HH: 正常
30代なかばには冠状動脈の閉塞により心臓発作を起こす可能性が高くなる
hh: 正常な人の5倍
2歳で速くも心臓発作を起こす危険性がある
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ABO式血液型 : 複対立遺伝子と共優性
3つ以上の型の対立遺伝子が存在する遺伝子
安全な輸血には適合する血液型を選ぶことが決定的に重要
免疫系は自分が持っていない赤血球糖鎖に特異的に結合する抗体タンパク質を血液中に産生する 輸血の際に血液細胞に異質の糖鎖がついていると、抗体が輸血液の細胞と反応して凝固する
4種類の血液型は3つの異なる型の対立遺伝子の組み合わせにより決まる
A糖鎖を生成する$ I^A、B糖鎖を生成する$ I^B、どちらも生成しない$ i
6通りの遺伝子型の組み合わせが存在する
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2つの対立遺伝子が対等に発現する
AB型: $ I^Aと$ I^Bのヘテロ接合体は両方の対立遺伝子が対等に発現する
多面発現性と鎌状赤血球症
単一の遺伝子が複数の形質に影響を及ぼすこと
鎌状赤血球の対立遺伝子の直接の影響は、赤血球の中に異常なヘモグロビンのタンパク質が生産されること 異常なヘモグロビン分子は、とくに高地や、過重労働、呼吸器疾患のためにヘモグロビン分子が連結して結晶化する傾向がある
結晶化すると、鎌状に変形する
鎌状の赤血球はすみやかに体内で分解されるため、貧血や体力減退が引き起こされる
また、流れにくく、微小血管中に蓄積して詰まりやすい
一般に、鎌状赤血球の対立遺伝子のホモ接合体の人だけがこの病気を発症する
ヘテロ接合体の人は通常は健全であることから、この病気は劣性の遺伝性疾患とみなされる
ヘテロ接合体の人では両方の対立遺伝子が発現しているため、正常なヘモグロビンと異常なヘモグロビンの両方が含まれている
多遺伝子遺伝
単一の表現形質に関係する2つ以上の遺伝子の相加的効果によるもの
これは多面発現性の反対の概念
ヒトの肌の色や背の高さなど、多くの形質には集団の中で連続的に変化する多様性がある
仮想的なモデルを考える
ヒトの皮膚の色素は、独立して遺伝する3つの遺伝子により支配されている
正確には少なくとも3つの遺伝子がこの形質を支配していることを示す遺伝的証拠が得られている
それぞれの遺伝子(ABC)の黒色肌の対立遺伝子は肌の色を1単位分濃くするように働き、それぞれの肌色の対立遺伝子(abc)にたいして不完全優性 https://gyazo.com/69c5ea44ba674e41e4b3cf17a69ed93a
環境要因の影響
あるヒトの集団について肌の色を実際に調べてみると、きっちりとした7通りの形質に収まらない微妙な色合いが見いだせるだろう
ヒトの肌の中間的な色合いが、日光にさらされるなどの環境要因の影響の結果として生じるため
遺伝性要員と環境要因の組み合わせの結果として生じる表現型としての形質は数多い
1本の木が受け継いでいる遺伝子型は固定されているが、風向きや日当たりおよび栄養状態により、1枚1枚の葉の大きさ、形、色などが様々に変化する
非常に古くから激論が交わされてきた課題
ABO式血液型などの形質は与えられた遺伝子型によりすべてが決定される非常に特殊な表現型
赤血球と白血球の数は、環境要因により大幅に変動する
遺伝子と環境という要因には重要な相違がある
遺伝的な影響だけが子孫に伝わる
環境による影響はなんであれ次の世代に伝わることはない